凄い証券会社
2つのアメリカアメリカ版「国家のバランスシート」アメリカの通貨にして「世界の基軸通貨」でもあるドルの運命を語る前に、まずは同国のストック(バランスシートに計上された資産や負債など)及びフロー(GDP)の状況を整理しておきたい。
例えば、良く知られたことだが、アメリカは世界最大の『対外純負債国』である。
だが、実際にアメリカが「いくら」の対外純負債を背負っているのか、それがどの程度のペースで増加しているのかなど、きちんとデータに基づき「可視的」に検証した書籍は少ない(ちなみに、筆者はこれまでに一度も目にしたことがない)。
ドルの話に入る前に、まずはアメリカのストックとフローについて正しく把握し、同国経済の現況を可視的に認識する必要がある。
グラフなどを用い、状況を可視的に頭に入れることで、読者はアメリカ経済について「鳥轍的」「マクロ的」に理解することが可能になる。
とはいえ、アメリカのデータのみを見ても、それが具体的に何を意味するのか、正確に理解するのは難しい。
せっかくなので、本書では比較対照として日本にご登場いただくことにする。
両国のデータを並べ、比較することで、それぞれのグラフやデータの意味について認識を深まっていくと考える。
国家経済の指標は、大きく2つに分けられる。
すなわち、①国富や金融資産などを示すストックと、②国際収支、国内総生産(GDP)などのフローである。
本書において、ストックとは各経済主体の金融資産の集合である「国家のバランスシート」を意味する。
また、フローといえば、主に名目GDPを示すので留意していただければ幸いである。
「各経済主体」とは、具体的には「政府」「家計」「非金融法人企業(一般企業)」「金融機関」「NPO」などになる。
国家経済とは、これらの経済主体の経済活動や蓄積(ストック)の集合として構成される。
当然ながら「国」全体の資産や負債、それに純資産(アメリカの場合は純負債)について評価する際は、これら各経済主体が保有するストックを総合的に見る必要がある。
国家の一経済主体の「ストックのさらに一部」にすぎない「政府の負債」2つのアメリカについて、「国の借金」などと称し、危機感を煽っている日本の財務省は、バランスシートを全く理解していないことになる。
きちんとした表現を試みるなら、政府の借金というべきだろう。
「国の借金」と表現するのは悪質なミスリードを意図しているとしか考えられず、いずれにせよ困った存在である。
また、アメリカ経済のフローであるGDPにおいて、個人消費の割合が相対的に高いことは、頻繁に新聞などに書かれる。
しかし、実際にアメリカの個人消費がどれほどの規模なのか、あるいは「その消費がどのように実現されていたのか」について、データを基に語られることは滅多にない。
本章では、アメリカ経済のフローとストックについて、実額やそれぞれの関連を整理しながら解説する。
実際の数字をベースに理解を深めていけば、07年までの「世界同時好況」が、いかに脆弱な基盤の上に成り立っていたかについて把握することができるだろう。
同時に、今後の世界経済の展望がいかに心寒いものか、明瞭に理解することができるはずだ。
世界の基軸通貨ドルについて考える場合、アメリカの「対外純負債」の規模がポイントになる。
1971年のニクソン・ショック以降、アメリカのドルは金と交換できない不換紙幣となり、金という裏付けを失ってしまった。
アメリカはドルが基軸通貨であるがゆえに、裏付けのないドルを貿易赤字の支払いに充て、同時に米国債売却などにより、国外に流れ出たドルを国内に還流させることを続けてきた。
世界最大の貿易赤字国であるアメリカは、毎年、経常赤字分の対外負債を増やし続けている。
これを放っておくと、ドルが他通貨に対し際限なく下落してしまい、ドル基軸通貨制度が崩壊してしまう。
世界中の誰も、価値が失われることが確実な通貨で、貿易を決済したいとは思わない。
ニクソン・ショック後のアメリカは、時に金利を吊り上げ、時に「証券化商品の販売」という形でアメリカ国民の「借金を輸出」し、海外からドルへの投資を確保することで通貨価値を維持してきた。
米国債の販売にせよ、「アメリカ政府の借金の輸出」であることに違いはないのである。
それでは手始めに、アメリカ及び日本の国家のバランスシートをご覧いただくと232つのアメリカしょう(図1-1・1-2参照)。
予め解説しておくと、国家のバランスシートとは文字通り「その国家の全ての経済主体」の金融資産及び金融負債を合算したものだ。
バランスシートというのは左側(借方)に金融資産が、右側(貸方)に金融負債が計上され、左右は必ず一致する。
資産総額が負債総額を上回れば、貸方の一番下に差額として「純資産」が計上される。
逆に、負債総額が資産総額を上回る場合は、差額が借方の一番下に「純負債」として計上される。
ここで注意してほしいのは、新聞などに登場する「対外純資産(二対外資産-対外負債)」や、「対外純負債(二対外負債-対外資産)」の金額は、前述の「純資産」や「純負債」とピタリと一致するという点である(統計上、全く同じ概念になる)。
そもそも「バランスシート」である以上、外部(国家の場合は外国)との金融資産のやり取りがなければ、左右の合計は必ず一致し、純資産も純負債も生じ得ないからだ。
日本が対外純資産国なのは、国家のバランスシート上で、その金額分だけ資産が負債を上回っているためである。
あるいはアメリカの場合は、国家のバランスシー図1-1アメリカの国家のバランスシート2008年(単位:10億ドル)負債が資産を上回っているからこそ、対外純負債国というわけである。
それを頭に入れた上で、両国の国家のバランスシートを比べてみてほしい。
とりあえず突っ込まれる前に書いておくが、アメリカの「国家のバランスシート」の貸方に登場している「統計上の不突合」は、本当にこの項目名で統計に計上されている。
以下、日銀の資料に掲載されていた「統計の不突合」の解説である。
「日本銀行『資金循環統計の国際比較03年272つのアメリカ図1-2日本の国家のバランスシート2009年9月未速報値版(単位:兆円)日本銀行「資金循環統計」政府の負債は地方公共団体分を含んでいる12月』(P20より)さらに、米国は、図表上に『統計上の不突合』が表れている。
米国の資金循環統計では、企業間信用など一部の金融資産・負債について認識時点や評価方法が資産サイドと負債サイドで異なることなどを勘案して両者のバランスを取っていない。
この結果、全部門の資金余剰と不足を合計しても、その値はゼロにならないため、『統計上の不突合』として表示されている」簡単に書いてしまうと、一般企業(二非金2β融法人企業)の金融資産と金融負債の評価時点、評価方法の違いを考慮し、両者がバランスしなくても構わないというスタイルの統計手法を採用しているわけだ。
一般企業の資産と負債の金額の「ズレ」を、「統計上の不突合」として、まとめて計上しているわけである。
日米両国の「国家のバランスシート」は、実に対照的である。
主な違いを整理してみよう(以下、全て1ドル90円で計算)。
国家全体で見ると、日本が250兆円を超える純資産(二対外純資産)国であるのに対し、アメリカは3・9兆ドル(約357兆円)の純負債国(二対外純負債国)最大の「純負債の引き受け手(要は資産よりも負債が多い経済主体)」が、日本の場合は政府であるのに対し、アメリカは非金融法人企業(一般企業)。
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